「そっか……智衣のこと、怖い?」

動きが止まってしまった。
図星だった。

「そんなこと…ないです。」

「それならいいんだけど…誤解しないでね。智衣、うまく表現できない人だから…」

うまく表現ができない?
だからって、暴力を振っていいわけじゃない。

「昔から…あまり喋ったことなかったので…」

「…あのね、沙知美ちゃん…どう思ってるか分からないけど、智衣…沙知美ちゃんのこと大切にしてるよ?」


千陽くんはご飯を食べ終わって、近くにあるおもちゃで遊び始めた。


「サッカーしてたの。中学から、ずっと…大好きだったんだ。でも、智衣が高校のころお兄さん亡くなって辞めた。」

サッカーは、お兄ちゃんが好きだった。
確か…昔は、智衣さんと一緒にやってたような…

「続けてほしいって言ったんだ。…そしたらね、部活で家に帰るのが遅くなるのがイヤだって…お兄さんが亡くなって傷ついてる沙知美を一人にはできないって…そう言ってたよ。」


嘘だ。