わたしが家に帰ると、知らない靴が何足かある。


そして、2階からはにぎやかな声。


「…ただいま…」

「さっちゃぁん!おかえり!」

姿は見えないけど、リビングから千陽くんの声がした。


リビングを覗く。

「あ、おかえり。」

千陽くんの隣には、綺麗な長い黒髪に、華奢な体をした女性、川村絵梨さん。

この人は義理の兄の友達で、よく遊びに来てくれる。


「すいません。ご飯…作ってもらっちゃって…」

わたしの分のご飯もテーブルに並べてある。


「あまりもので作ったから、味に自信はないけど、食べて!」


千陽くんの向かいに座って、目の前にあるごちそうを口に入れる。

「すごい!すごくおいしいです!」


絵梨さんは笑う顔も綺麗だった。


「沙知美ちゃん、大丈夫?」

「…はい?」

「お母さんのこと。…智衣、すごいツラそうに話すから。」

勝手に家の事情を他人に話してるんだ。

恥かしい…

自分が尚美さんに乱暴してるくせに。


「大丈夫です。」