相変わらず、鼻歌を歌っている。

「邪魔だって!」

腕を引っ張ったら、その反動で肩を寄せてしまった。


自転車は俺達の横を通り過ぎた。


あまりの近さに、



「あ…ごめん。」



鼓動が早くなっていくのが分かる。
口から心臓が飛び出そうだった。


「…いえいえ。…ありがとうございました。」



それから微妙な空気になって、家に帰るまで沈黙だった。




戸野と別れて、寄り道をして帰ろうと思った。
今日は母親が仕事休みだから、家に帰るのは遅くてもいいし、あの家には帰りたくない。