「夏以来だよね。会うの…」

「うん…」

「ごめんね。…そんな嫌な顔しないでよ……あのね、別れようって言われたとき、なんか分かった気がしたんだよね!ずっと付き合ってんのに、手もつないでくれなかったじゃん…」

誰も通らない路地は、後藤の声が響いて聞こえる。

「ずっと疑問に思ってた…それでも…波のことどんどん好きになってて…今でもその気持ちにかわりはないの。」

後藤は泣きそうになるのを我慢しながら、話を続けた。

「手なんかつないでくれなくてもいいから…そばにいたいよ。」



同じだ。
俺が慎也に思うことと。


何もしてくれなくていいから、そばにいたい。


そう思うのが、一番ツラいことも…



「後藤…俺ね、最初から好きじゃなかったんだ…好きじゃないのに後藤と付き合ったんだよ。」


後藤は涙を落として泣いた。

「…なんで?……なんで好きじゃないのに付き合ったの…」

「分かんない…ただ、俺にも好きなヤツがいた。多分、そいつの気引くために…付き合ったのかも。」


最低、最悪の言葉。


でも正直に話したかった。



「波…ひどいよ。」

「うん…」