戸野の家の前。


辺りはもう暗くなっていた。


「今日はありがとうございました!…あ!お金…」

「あー…いいよ、いらない。泊まらせてくれたお礼。」

「…でもそんなわけには…」

「いらねーよ!じゃぁな、はい!バイバイ。」

そう言って後ろを向けて歩いた。


「ありがとうございました!!」

軽く手を振った。





家に帰る途中、思ったこと。


戸野は、大丈夫だろうか。
戸野は、泣いてないだろうか。
戸野は、無理してないだろうか。
怒られてはないだろうか。



すごく心配になって、何度も足を止めた。


「波!?」

自分を呼ぶ慎也の声。
顔を上げた。

「慎也…」

「お前……どこ行ってたんだよ!!!」

怖い顔で俺の肩を押した。

は!?何で怒られなきゃなんねーの?


「おばさん心配してたんだぞ!昨日も帰って来なくて、朝も昼も連絡が来ないって…」

携帯を見る。
充電が切れていた。


「充電切れてる。」

「はぁー…早く帰れ。おばさん待ってっから。」


「…うん。」