「憲太、どうした?」
「飯、一緒に食うか?」

「ちげーちげー」
「そうじゃなくて」


憲太は手をひらひらと仰ぐ仕草をした。


「椎葉さんが呼んでるんだよ」


その言葉はさっきまでの冷やかしと重なったように思えた。


「え、あ・・・うん」
「行くわ」


そして僕は憲太の元へ歩み寄る。

憲太で隠れてはっきり見えなかった人影の正体は涙だった。


「涙、どうした?」


涙は俯いていた。


「涙・・・?」


僕は明らかにいつもと様子が違う涙が心配になって涙の顔を覗き込む。

すると涙は僕の制服の裾を掴んでこう言った。


「・・・ちょっと、来て」


涙はまだ俯いた状態なので表情がはっきり見えず、心境が読めない。


「あ、うん」


そして僕らは教室を出て行った。