ーー・・・
『亜紗はね、将来たあくんと結婚するんだよ!』
『僕が亜紗ちゃんをもらうんだ!』
『あら、たあくんありがとう。おばちゃんうれしいわ。ね?お父さん?』
『あぁ、お父さんも拓くんならいいぞ』
『えへへっありがとう、おじさん!』
ー12年後(高校2年)ー
「亜紗ー、ほら部活行くよ。」
最近全然部活にいていないあたしを
親友の川島柚乃が迎えに来た。
あたしは中学校から吹奏楽部に所属している。
それなりに吹けるし、ソロも任せられるけど
自分の音に自信がなく最近楽器を吹くのも
いやになってきたんだ。
「んぇー、今日は・・・」
「そろそろネタ切れっしょ?」
あたしを馬鹿にしたようにフッと鼻で笑う。
柚乃はあたしと違って学年で3位の優等生。
スポーツも万能で音楽的センスも抜群。
「いやぁ、本当あたし無理。もう楽器吹きたくもない。」
そう言い残し机のわきにかかっている鞄を持ち
教室を出る。
柚乃は走ってあたしを追いかけて腕を強くつかんだ。
「あのさ、亜紗?あんた十分うまいのになんで自信ないのよ。
あんたにあこがれて吹奏楽入った人だっているのに・・・。」
柚乃っていい人だけどこういうところは
あんまりすきではない。
「ごめんね、柚乃。こんどなんかおごるからさ」
そのまま昇降口へ向かう。
あたし、にげてばっかじゃん。