甘いココアを手渡してくれたけど、眺めてるだけで口をつけない。


美空は心ここにあらずでボォッとしている。


おおかた親の事でも思いだしたんじゃないかと慎司は思っていた。


電話したときの母親の対応を知っていたから。


「美空?今日は泊まっていくといい…このまま帰すのは俺には出来ない」


美空は以外にも素直に頷いた。


「お風呂いれるからはいっておいで」


これも素直に頷く。


いったい美空はいままでどんな経験をしてきたのか…




美空は慎司がいれてくれたお風呂に入っていた。


浴槽から外の景色がみえ、さっきまで感動していた夜景も今は心に響いてこなかった。
 

そろそろ出よう…慎司さんが心配して来そうだから…


「美空?大丈夫か?」


ほらね…いつも私の心配…


「今から出ます」


「じゃ、ここにバスローブ置いておくね」

一言いうとドアが閉まる音が聞こえ、私もお風呂をでた。


バスローブはかなり大きかった。でも気にもならなかった。


今気になるのは慎司に話すべきかどうかだ。


聞いてもらいたい気持ちと聞かせてはいけない気持ち…


そっと右わき腹にうっすら残る傷跡をさすった。