「美空?彼女…木下とはもう何の関係もないんだ」


隣に座っている慎司は私の手を取り優しく握っていた。


木下さん?…そうだ、あの日の朝、私の噂話していた人達の中にいた。


そう言うことか…全てが繋がった気がした。


「慎司さん…慎司さんは凄い人。そこの雑誌も見たけど、前にネットでも見たことあるの。その時生きる世界が違う人だと思った。でも…今は隣にいる。慎司さんを信じてもいる。けどね、さっき木下さんに言われた言葉も疑っていたことあった…暇つぶしかもって…」


「美空!!それは…」


慎司の言葉を遮った。


「聞いて?慎司さん。私ね、暇つぶしでもいいと思ったの。今までズット色んな事から目を反らして生きてきた。だから26歳にもなって何にもない…亡くなった人をずっと思い続けて…目を反らして…」


慎司は雨の中倒れていた時を思いだしていた。あの坂を上れば墓地。きっと…その人のお墓参りの為に…


「自分が信じた人を信じてみようと思った。例えまた傷付いても…けど、それは自分のことで慎司さんが傷つくことがあってはダメなの」


真っ直ぐに見据えてくる美空の瞳は力強く、それでいて寂しげだった。


「私が側に居ることで慎司さんに傷がつくのなら…今…終わりにしたいの…」


美空は精一杯の自制心を総動員して言葉にした。


気を緩めれば泣き出しそうだった。