彼女が出て行った後、すぐに私をソファーに座らせ救急箱をもって戻ってきた。


「すまない…」


一言そう言って私の頬についた傷口の処置をしていく。


その言葉に何て返していいのか分からず、なされるがままにおとなしくしていた。


ただ思うのは、慎司が病院で嫌な思いをしてしまうのではないかと言うこと。


一緒に働いている以上、顔を合わせてしまう。


それに…最後に言った言葉。


ただ、慎司になにかあったらと思うと不安でしょうがない。


「あのひと…泣いてた…私、私…ごめんなさい



「なぜ美空が謝るんだ。俺が悪い。ちゃんと説明するから聞いてくれないか?」


慎司さんは悪くない。私が、私がこんなだから彼女を怒らせた。きっとまだ慎司さんの事好きなんだろうから…


「あの人と付き合ってたんだよね。きっとまだ慎司さんの事好きなのね…私、怒ってなんかないよ。ただね…」


「ただなんだ?確かに彼女と付き合っていた。一年前に彼女が浮気をして別れた。それを今更好きだの何だの言われても俺にはそんな感情はもうない」


慎司は必死だった。俯いている美空の目を見ればそこに感情はなかったから。


やっと取り戻したのに失うわけにはいかなかった。


今は怒りより美空を失うんじゃないかという恐怖しかなかったのだ。