「やっぱりあなただったのね……」


女は怒りで顔がひきっつていた。


誰?……私の事知ってるの?……


「覚えてないかしら?あなたが入院してるときに世話してあげたじゃない」


入院……全ての五感が停止してしまった感覚だったが、あの時の事がフラッシュバックのように駆けめぐった。


「そうよね…覚えてないのも無理ないかしら。慎司を自分のものにするので必死だったみたいだし」


怒りで全身が震えてきていた。まさかと思ったけど本当にこうなるとは思ってもみなかった。


美空は薄ら笑いを浮かべて近づいてくる姿に、最後にみたナースを思い出していた。


病室を出ていくとき、開いてる扉の向こうに診察中の慎司の後ろ姿を見つけ見つめていると、凄い顔で睨んできたナース。


「あっ、あなたは…」


「やっと思い出した?フフフ。ねえ、気にならない?なんで私がこの部屋に入れたか…それにその雑誌見たんでしょう?まさか鈍いあなたでもわかったわよね?慎司は物珍しかっただけよ。あなたの事は暇つぶし。ほら、出て行きなさいよ!」


ソファーに置いてあった私のバックを顔に投げつけてきた。


「っつ……」


頬に痛みが走る。


「早く出て行きなさいよ!!!!!」


つかみかかりたい衝動をおさえた両腕は震えていた。目の前の美空は儚く小さくみえ、それがマスマス怒りを膨張させていった。


美空は動けなかった。出て行きたくても身体が動かなかった。


彼女が言った言葉は私がうっすらと考えていたこと。


そうだとしても今は慎司の優しさに甘えていたかった自分。


慎司を…信じたい自分…


「なにをしている…」


低くて冷たい声が部屋に響いた。


慎司さん…