美空はやっと落ち着いてきたのかヒャックリをしながら話し出した。


「ヒック…ごめんな…ヒック…ごめんなさい。私…ヒック…酷いことばかり…ヒック」


「そうだな…酷いことばかりだ…クスクスクス」


慎司は今までのことを思いだしていた。


「美空と出会ってからは走ってばかりだったからな。クスクスクス。大学を卒業してからはまともに走ったこともなかったのに。クスクスクス」


美空の頭の上で笑う慎司は満たされていた。


付き合ってるわけでもない、美空の何を知ってるわけでもない。


それでもそんな事どうでもいいと思わせる何かがあった。


「そうだ、大切なことを言い忘れていた。美空が友達の約束なかったことにしようと言ったよな?その返事聞く前にいなくなったろう?その返事をするためと主治医として特別往診をしにきたんだ」


一瞬美空の身体がビクッとしたのが分かった。


「友達の約束、それは美空の言うようになかったことにしよう」


泣きはらした顔で見上げてくる美空。


食べてしまいたくなるな。と心の中で笑っていた。


「新たにここから始めたいんだ…美空…俺と…付き合ってくれませんか?」