狭い部屋に長身の慎司が居るとマスマス狭く感じてしまう。


立っている慎司にソファーに座るよう促し、お茶の用意をする。


と言ってもインスタントのコーヒーしかなく、カップもマグカップしかない。


瓶の蓋を開けようとするが片手しか使えない今、どうしようかと迷っていると


「その手どうした?!」


「えっ?!」


怪我した右手を掴まれ顔をあげると厳しい顔をした慎司と目があう。


「どうしたと聞いたんだが…ちょっと見せて」


有無を言わせないくらい強引にソファーに座らせられ、あっという間に包帯をとって傷口をチェックしだした。


「いつやったんだ?昼間か?」


「う、うん。ちょっと転んじゃって…」


「グラスでも割って切ったってとこか…応急処置がよかったな。傷口も塞がってるし今は縫う必要もないだろう」


「縫う?そんな傷だったの?」


「結構な傷口だと思うが…」


そう言って私を見つめてきた。


「美空…」


トクン…いきなり呼ばれた名前。


「元気だったか?」


トクン…ひどい事した私になんでそんな優しい笑顔を向けられるの?


「痩せたみたいだがちゃんと食べてるか?」


やめて!優しくしないで!


握られた右手をふりほどいた。