ここだけ時間が止まったかのように動けないでいた。


小さな穴の向こうにいる慎司さんはジッとこっちを見つめている。


頭が働かずどうしていいのか分からないで佇んでいると懐かしい声が聞こえてきた。


「美空ちゃん、いるんだろう?開けてくれないか?」


二人を遮っている一枚のドアを取り除きたい自分と、会うのが怖い自分がいた。


「美空ちゃん?」


「慎司…さん…」


頭で考えるより身体が勝手に動き震える手で鍵をあけていた。


そっと開けた扉からは会いたかった人の笑顔がのぞいた。


「よかった。開けてくれないかと落ち込んでいた所だよ」


「どうして?…なんでここが分かったんですか?」


「うーん、それは…企業秘密!バレたら俺は首かなぁ。アハハハハハハ」


変わらない。何なも変わってない。


涙が流れそうになるのを必死にこらえた。


「美空ちゃん?ちょっと入ってもいいかな?」


私は何も言えず慎司が入れるように横によけた。


「おじゃまします」


慎司から見えない位置で慌てて涙を拭った。