慎司が煎れてくれたコーヒーに口を付けながら考えていた。


司と出会ってから月日はかなり浅い。


彼の事なんて医者以外何にも知らなかった。


なのに、ここまで信じてしまうのは彼が医者だから?


違う……確かに職業だけで信じてしまう所はあるが、自分の今の気持ちはそれだじゃなかった。


慎司のことを考えると心が温かくなる。何があっても大丈夫だと思える。


何が好きで、どんなものが嫌いなのか、映画は何を見るのか、本はどんなジャンルを読むのか、知りたいことが一杯あった。


心が温かいもので満たされていく…この気持ちって…………


違う!絶対に違う!相手はお医者さん。生きる世界が違う!


私に優しくしてくれるのはお友達だから…


お友達…


いつかは居なくなる…


誰にも深入りしちゃいけない…


もう…失う辛さを味わいたくない…


コーヒーに写る自分の顔が情けなくて惨めで…
そして…悲しそうで…



「慎司さん?お友達の約束…なかったことにしましょう…」



目の前でコーヒーを飲む慎司さんに別れを告げていた。