そんな美空の心情を知っていながら慎司は寝たふりをしていた。


美空が身動ぎをした時点で目か覚めていた。


今この一時をもう少し味わっていたいという自分の我が儘。


そのせいで美空は今硬直して緊張している。


「ごめん…もう少しこうしていさせて…」


黙っていようと思ったがフェアじゃないと思い直し美空に了解を得ようとした。


「慎司さん?…起きてたの?」


「少し前からね」


美空を抱きしめてる腕を緩める気は今はない。


「また迷惑掛けちゃったのは申し訳なく思うけど…この状況は何?」


「僕が君を抱きしめてる…」


「………」


美空はほとんどパニックだった。


ウブ……そんな年齢はもう過ぎ去ったが…しかしいくらなんでもこの状況は…


どうしたらいいのかと考えあぐねていると、抱き締められていた腕の力が緩くなり、そっとベッドから出る慎司さん。


慣れた手つきで点滴の針を抜き片づけていく。


「熱は下がったみたいだね。お腹好いてない?朝御飯作るね」


一言言葉を残すと寝室を出ていった。


目が覚めてあり得ない状況の中慌てふためいたかと思うとあっという間に静寂が戻る。


「いったいなんだったんだろう…」


状態を起こすと軽い目眩に襲われたが、寝室を出ようと扉へと向かった。