恭ちゃんのお墓は大きな木の下にある。


ここから見渡す景色は海が見え心地よい風が吹き渡る。


「久しぶり、恭ちゃん。大好きな真っ白いバラだよ」


丁寧に花を生けお線香を焚いて手を合わせる。


そして木の下にシートを引き一休みをした。


「気持ちいいなぁ~。恭ちゃん、私入院してたんだよ。そしたらね、恭ちゃんが夢に出てきたの。あの頃のまま最高の笑顔で笑ってた。でね、どうなってるのか主治医の先生とお友達の約束までしたんだ。笑っちゃうよね」


一人で喋ってるのを見られたら頭がおかしいと思われるかもしれない。でも本人は見えない相手とちゃんと会話していると思っていた。


クスクスと笑っていると一際大きな風が吹く。


「恭ちゃん?」


私は辺りを見渡した。


当然ながら誰かがいるわけでも、恭ちゃんが居るわけでもない。


しばらく海を眺めていると雲行きが怪しくなってきたのに気がついた。


シートをたたみ、もう一度手を合わせるとその場を後にする。


帰り際に振り返り恭ちゃんのお墓に向かって手を振った。