診察室の奥へ行くと白衣を着た慎司さん。


いつも部屋でくつろぐ姿とは全然違っていた。


「座って」


立っている私に慎司の目の前にあるイスを進めてくる。


失礼しますと声掛けをし言われるまま座った。


「退院してから一度も来なかったね。何故?」


いきなりの問いかけに戸惑った。


なんで?と不思議に思ったが今は医者と患者。その辺ははっきりしときたいんだろうと思い


「なんともなかったから…来なくていいかと…」


小さい声で答えるも慎司の顔は見れなかった。


「そういう判断はこれからはしないこと。検査は定期的にくること、わかった?」


「はい…」


返事をしながら顔を上げるとそこにはニヤツいた慎司の顔があった。


内心やられた!と思ったが慎司の後ろにいる、さっきのナースが睨んでることに俯いてしまった。


「結論から言うと検査結果はなんでもない。ただ貧血が酷いから暫くは薬を飲んで…」


慎司が説明してくれる声も上の空だった。


ナースの顔とさっきの言葉、入院中時の私の噂。


すべてが蘇ってきて座っているのがやっとだった。


「飯田さん?!大丈夫?!」


「!!!!!」


顔を上げると目の前に慎司の顔があった。


「あっ、ごめんなさい…わかりました」


慎司は訝しげな顔をしたが問い詰めることはしなかった。


無事?診察も終わり帰ろうと受付に行き出口へと向かって歩き出すといきなり腕を掴まれた。