朝早く電話が鳴り美空を起こさないかハラハラしたが、幸いなことにグッスリと眠っていた。


急いで仕度をすませ、美空への手紙を書き、オデコにキスをした。


言うことを聞いて家で待っててくれればいいが…


そう思いながら足早に家を出て行った。



病院につけば昨日家に乗り込んできた木下が早番で勤務に就いていた。


「星野先生、島田さんのバイタルが落ちてサチュレーションも…」


「夜勤の先生は?」


「急患がありまして全員そっちに…」


木下はナースとしては腕が立つ。


何もいわなくても準備は完璧だった。


淡々と処置が進み、患者の様態も落ち着いた所で病室をあとにした。


8時を回ったところだった。


美空は起きてるだろうか…電話をして確認したい思いで足早に廊下を歩く。


「星野先生!!」


後ろから自分を呼ぶ声。木下である。


舌打ちをしたい気持ちを抑え振り返った。


「話があるんですけど」


「仕事の話なら聞くが、プライベートの話ならパスだ」


「いいんですか?患者と付き合ってると言いふらしますよ?」 


「そうしたければ言いふらせばいい。俺を敵に回した事を後悔することになるがな」


慎司は木下を一睨みすると踵を返しその場を後にした。


木下は怒りのやり場に歯軋りをするしかなかった。


正直、慎司を敵に回すと仕事をなくす。下手したらこの辺りでナースの仕事が出来なくなるかもしれなかった。


なぜあの時慎司を裏切ったのか…後悔するも既に遅かった。


今はあの女と別れさせることしか頭にない。


飯田美空…絶対に幸せなんかにさせない…