疲れた身体にお湯の暖かさがじんわりと広がっていく。
「…ふぅ~~っ…気持ちいい」
つい湯船の水面を何気なしに見つめる。
正直、今、銀狼に会いたくなかったな……。
私は湯船に顔を半分沈め、息を吐いた。
「ブクブク…」
今、銀狼と顔を合わせてもかける言葉が見つからない。
私の腹の中には、煮えきれない何かがあるようだ。
それが、何なのかは…
上手く説明できない。
そんな心境の私は、銀狼にどんな態度を取ればいいかも
解らない。
それに…銀狼は一体何をしにここに現れたのだろう。
昨夜、夏代子と言葉を交わした銀狼が
真央である私に、一体何を告にここへ現れたのか…。
それを聞く事も、何となく怖かったのだ。
何もかもが、『何となく』ではっきりしない。
そんな自分が、やっぱり『何となく』嫌だった。
…このまま帰ってくれないかな…。
私はいつもより長めに湯船に浸かっていた。