「…っしゃああっ!!片付けほぼ終了~~っ!!」


私は、ガッツポーズを取りながら、すす汚れた顔を拭った。


朝食後から、ただただ無心に片付けに励んでいたら、

今日一日で多方の整理が終わってしまったのだ。


さすが、やれば出来る子!


自画自賛しながら、時計に目をやると

もう夜の八時を過ぎていた。


「ひやあ~っ!!もうこんな時間っ!!」


特に予定もないが、一応慌ててみる。


予定はないが、慌てる理由は他にあるのだ。


それは…


お風呂。


おばあちゃんの家は本当に田舎の古民家といった佇まいで、

かろうじて電気は通っているが、現代の文明の利器がほとんどない。


この家で一番の文明の利器と言えば、テレビぐらいだ。


そういった環境なので、当然お風呂も蛇口をひねって

お湯が出るとはいかず、


外の釜戸で火を起こして湯を沸かさないといけない旧式だ。


ここ数日はその作業が面倒で昼間に水を浴びていたから良かったけど

夏とはいえ、この時間では、さすがに水では凍えてしまう。


汗と埃にまみれた自分を見る。


…どうやらお風呂は必要なようだ。


私は諦めて家の裏にある釜戸へと向かった。



「カチっ、カチっ、カチっ。」


釜戸に薪をくべ、火を起こそうと試みてみるが…



「…おっかしいなぁ~っ」


何度やっても火がつかない。

お風呂の沸かし方は子供の頃、おばあちゃんがやっているのを

よく見ていたからなんとなく解る。


「…まずは火種に火を付けて…」


「カチっ、カチっ」


一人でブツブツ言いながら、

釜戸の前で悪戦苦闘していると…



「…火を起こしたいのか?」



「……。」



今日は会いたくもない客がよく訪ねて来る日だ…。


私は振り向かずに答えた。


「お風呂沸かしたいんだけどね。」


「……薪が湿気ているのだろう…。

 そこをのけ。俺がやる」



そう言って、声の主、銀狼は私を押しのけると

釜戸に向かって指を

「パチンっ」

と鳴らした。


それに答えるように

「ボッ!!」

と音を立て釜戸から火が立ち上る。



…何と便利な……。




「…もういいぞ。湯は湧いた」



「…ありがとう」


私は銀狼に目を合わす事なくそう言うと、

そそくさと浴室へと向かった。