私は銀狼の肩ごしに滲む視界で宙を見据える。
おばあちゃん、遠い昔に一体何があったの…??
どうして銀狼はこんなにも傷ついているの…?
……どうして……
どうして、私と銀狼は出会ったの…?
……苦しいよ……
私の想いが…
銀狼の想いが…苦しいよ……。
私の中に芽生え始めた、彼への想いを
必死に否定する…。
気付かないフリをする……。
今なら、まだ気付かないフリが出来る……
そうする事で、激しい感情の渦から自分を保っていられる。
この激情に飲まれてしまったら、きっと自分が自分でなくなってしまう……
……それが……とても…怖い……。
山神が言っていたように
この不思議な運命を導いているのがおばあちゃんだとしたら…
おばあちゃんは何を意図して私にこのような想いをさせるのか…
何を意図して、銀狼に激しい感情だけ残して行ってしまったのか……
『おばあちゃん……』
思い出の中のおばあちゃんは優しく微笑む……
『ねぇ…おばあちゃん…私はどうすればいいの……?』
投げかけた言葉は返って来ない……
虚しく宙を漂うばかり…
私は、銀狼の肌触りの良い銀髪に顔をうずめた。
柔らかい感触に張り詰めた気持ちが少し落ち着く……
そのまま静かに瞳を閉じてみる……
銀狼の髪から…身体から、上品で落ち着く香木のような香りが立ち上る…。
銀狼の香りだ……
『良い匂い……』
香りに誘われ閉じた瞳をうっすら開いた…
『!!』
『ふよふよ………』
『!!!???』
光の玉だ!!
私を一番最初にここへ導いた光の玉が
私の鼻先をまた、ふよふよと浮いているのだ。
突然の事に、私は言葉を発するよりも先に
思わず身体を硬直させる。
「…真央…?」
銀狼が私の身体の異変に気付いたようだ。
『銀狼っ!!』
そう叫ぼうとした時……
光の玉は吸い込まれるように
私の身体の中へ侵入してきた。
目の前が真っ白になる!!
――銀狼っ!!