「お前は夏代子の血縁だろう…?
あれから、何代過ぎた?」
山神の…深い翠緑の瞳が私を捕らえた。
「……『夏代子』は……
あたしの…おばあちゃん」
「そうか…。
思ったより早かったな……」
そう言って山神は静かに瞳を閉じた。
「ね…ぇ……あなた…
何か知ってるの?
ねぇっ!知ってるなら教えてよっ!!」
私に起こる、この怪奇現象とも呼べる
異常な出来事の数々……。
どうして度々このような恐ろしい目にあわなければならないのか?
私の精神もいっぱいいっぱいだ。
「……そうあせらずとも…
いずれ全て解る事だ…」
「答えになってないっ!!」
私の心の叫びに答えるかのように
山神は閉じた瞳をゆっくり開いた。
「真央……お前が答えを出せばいい…。
あの時に出せなかった答えを…
それが……『夏代子』と俺が交わした最後の約束だ…。」
――――また…約束?
何それ?
おばあちゃんは一体山神と何を約束したの?
「…『夏代子』がいずれお前を導く…
その時をただ待てばいい……」
「…………」
静かに語る山神の口調には何処か落ち着きがあって
私からそれ以上の言葉はもう出てこなかった……。
「どおおおおーーーーーんっ!!」
ふいに凄まじい破壊音が辺りに響き渡った。
その爆音をかわきりに、人気の無かったこの社に
ざわめく人々の声があちこちで上がる。
「どうやら…今夜はここまでのようだな……
お迎えが来たようだ」
爆音は二度、三度と続く…
その度に、社全体が揺れているようだ。
「山神様っ!!ご無事ですかっ!?」
社の異変に勢いよく扉を開けたのは…
鳴人だった…。
「大事無い……。おおかた、犬神が乗り込んで来たのだろう??」
「はいっ!!我々で結界をはっていたのですが…」
山神は何が可笑しいのか、
楽しそうに笑っている。
「あれも、腐っても神だからの。
お前達の結界では到底役不足だろう」
「どれ……久々に会う友神に
目覚めの挨拶でもしておくかの」
そう言って山神はゆっくりと腰をあげた。