「うわぁぁー!!真央ちゃん、凄い似合ってるよっ!!」
私の浴衣姿を一目見た鳴人は、
陽気な歓声で私を出迎えてくれた。
「あ‥ありがとう‥」
私はというと、さっきの銀狼とのやり取りで
釈然としない腹立たしさを抱えたままで
つい表情が曇ってしまう…。
―――そりゃ、私も悪かったかもだけどさ
あんなに怒鳴らなくてもいいじゃない‥‥。
「その簪どうしたの??」
鳴人が私の頭にささる大きな簪を指差した。
突然簪の事に触れられ心臓がドキンと跳ね上がった。
「あぁ…鏡台の中身を整理してたら、出てきたから……」
私は咄嗟に嘘をついた。
言える訳がない。
犬神に浴衣を着付けて貰った上に、
簪をプレゼントされたなんて…。
「その簪……なんだか、真央ちゃんっぽくて、いい感じだねっ!」
そう言って鳴人は無邪気に笑った。
―――私っぽい……かぁ……。
『今のお前には、本当にそれが良く似合う』
銀狼の言葉が
私の中でもう一度繰り返される。
銀狼は頑なに、私を『夏代子』だと信じている。
私自身も、その誤解は問いていない。
それは私しか知らない真実。
ーーーーちょっと言い過ぎたかな……。
少し、私の気持ちを押し付け過ぎたのかもしれない……。
事実を知らない銀狼の気持ちを思えば……………
「…………!!」
ーーーー何故っ!?
自分の思いにドキリとした。
ーーーなんで、私が銀狼を思いやってやらなきゃならないの??
意味わかんないしっ!!
私は、これ以上この事は考えたくないとばかりに
頭をブンブンと振った。
「……真央ちゃん……どうしたの?…」
私の不可解な動きを不信に思った鳴人が
呆気にとられて、こちらを見ている。
「…なんだか、ちょっと変だよ…。顔真っ赤だし…」
鳴人に指摘され、益々顔が熱くなる!
「な…なんでもないよっ!さっ、お祭り行こっ!!祭り、祭りっ!!」
そう言って、これ以上私の不信な態度は鳴人に見せまいと
彼の数歩先を歩いた。
ーーーーお祭りから帰ってきたら、私から謝ってあげてもいいかな……。
ほんの少しだけ……そう思った……。