「全く…。お前は日に日に凶暴になってくな!」


銀狼はブツブツ文句を言いながら、

器用に浴衣を着付けて行く。


「それは、あんたが悪いんでしょっ!?」


「俺は何も悪い事なんぞ、しとらん」


ひょうひょうと言いのける。


「普通女の子の服を剥ぎ取ったりしないよっ!!」


「自分で浴衣一つ着付けれぬお前が悪い」



……くっ!!

……言い返せない。

しかめっ面で拳を握る。


「ほら、出来たぞ」


銀狼にそう言われ、顔を上げた。


目の前の銀狼と目が合う。


私は、さっきまでの腹立たしさも忘れ

一揆にテンションが上がり、自分の姿を確認しようと

ワクワクしながら鏡を覗き込もうとした。


…が、


「ちょっと待て」



銀狼に腕を掴まれ、その動きを止められた。


「何よ??」


銀狼は顎に指をあて、首を傾げながら

浴衣姿の私を、じっと見つめている。


「………何か足りない……」


失礼な男だ。

浴衣姿の女の子を目の前にして言う事だろうか?

その言葉に少しムッといながら、言い返す。


「だから、何よっ!?」


「………ふむ…。そうか……。ちょっとそこに座れ!」



そう言うと、銀狼は私をその場に座らせた。


「ちょっと!何すんのよっ!!」


喚いて暴れる私に、銀狼は困ったように溜息まじりで呟いた。


「うるさい。…本当にお前は俺といると怒鳴ってばかりだな。

少しは大人しく言う事を聞け!」



………………。


ーーそうさせるのは、あんたでしょっ!!

…そう思ったが…

なんとなく……言い返せなかった。


急に大人しくなった私に銀狼は穏やかな声色で言った。


「ふふっ…いつもそれぐらい大人しくしていてくれると助かるのにな」



…………………。


その言葉は、なんだか妙に照れ臭く響いた。



この場を淡い『沈黙』が包み込む‥‥。


どこか照れくさくって、居心地の悪さすら感じる‥‥。



銀狼は、私のこのような感情を知っているのだろうか…?

いや……知って貰ってても困るけど…。



そんな私の気持ちなど

全く無視した銀狼の声が

淡い『沈黙』を破る。



「よし!出来た!もう、いいぞ!」



そして、私の手を引き

鏡の前に連れ出した。