ごめんね…



ごめんね……。



___何を謝ってるの??





本当に、ごめんね……。




_____意味わかんないし……。





まどろんだ世界がゆさゆさ揺れる…。




「真央ちゃんっ!!」


怒声にも似た声がボヤけた頭に響く。




「ちょっとっ!!聴いてるのっ!?」





「…ん……あ……?」




開けた視界に飛び込んできたのは


精巧な作りのフランス人形。



その可愛らしさに思わず手を伸ばす…。



「…バチンっ!!」


差し出した手を勢いよく払われ、


その痛みで我にかえった。



それと同時に、精巧なフランス人形が鳴人である事を認識する。



プンプンっ!と言うリアクションそのままが似合う人物など、そうそう居ない…。



「酷いよっ!真央ちゃんっ!!片付けを手伝ってって言いながら、自分は昼寝っ??」



「うぇ…??」



……そうだった……。



私はあれから、あの変態狼と別れて、おばあちゃんの家に戻って来ていたのだ。



『夫婦はいつも一緒にいるのが当然だっ!!』


などと、馬鹿馬鹿しい事をの賜っていたが、

そういう所に余計に腹が立ったので、

捨て台詞と共に、犬神神社に置いて帰ってきたのだ。



『ついて来たら、二度とキスしないから…。』



……この言葉、意外と効力があったようで、

銀狼はムスクれた顔でこちらを睨んではいたが、

それ以上追って来ようとはしなかった。



そうやって銀狼と別れて、おばあちゃんの家に帰り着いたのは、

真夏の太陽が、すっかり顔を出した朝の5時過ぎ…。

当然眠れる訳もないので、朝の涼しいうちに、

本来の目的である遺品整理をしてしまおうとゴソゴソやっていたら、

心配した鳴人が様子を見にきてくれ……



ーーー今に至るのだ。




鳴人は、頬をめいっぱい膨らませて


まだ畳に寝転がっている私を上から睨み下ろしている。



「ごめん、ごめん、ここ2、3日、あんまり寝てなかったから…」



そんな鳴人に言い訳しながら、彼に視線を合わせると…



白い滑らかな陶器のような肌を所どころ埃で汚した鳴人が、

すぐ様心配そうな表情を浮かべ私を覗き返した。




その様が、鳴人の元々の可憐さと、余りにアンバランス過ぎて

私は思わず吹き出してしまったのだった。