楽しそうに笑っているおばあちゃんとは対象的に、
腕組みをして、そっぽを向いたように写っているその男性は、
腰まである長い髪を緩く後ろで縛っている。
そして、その長い髪が似合うくらいに背が高く、手足も長い。
醸し出す雰囲気はモデル級だ。
「おばあちゃん、やるう~!」
この人がおばあちゃんの旦那様なのかな??
私達家族はおじいちゃんを知らない。
母が物心ついた頃には、すでに居なかったらしい。
若くして交通事故で亡くなったそうだ。
昔はここに無かった写真…
おばあちゃんは、亡くなる前この写真を写真立てに飾り
どんな気持ちで眺めていたのだろう…。
都会のせわしない暮らしは、いつの間にか家族の絆とか、人との繋がりとか、
そんな大切な何かを忘れて行ってしまうものなのだろうか?
私は、その事実に戸惑いを隠せない…。
実際、私達家族はもう何年もここに訪れていない……
おばあちゃんが亡くなるまでの数年間、どういう暮らしをして、何を思っていたのかなんて
知る人はいない。
居なくなってしまった今となっては、知るすべもない……。
『そんなものなのかな…』
私は、写真立てをそっと元の化粧台へ戻した。