「…ねえ…銀狼…。その祟り神はどうして私を…襲ったの…?」


私は一番聞きたかった事を口にする。


「…は…??何を今さら…」


銀狼は呆れたと言わんばかりの視線を私に送る。


「…あたしが、『人柱』だから…??

あたしを食べて力を手に入れる為…?

…あたし…あんな風に食べられちゃうんだ…?」



生きながらにして…化物に喰われる……。

これ以上の恐怖が、この世にあるものなのか…?

私の手足は小刻みに震える…。


その姿を見た銀狼は、切れ長の瞳を少し細め短い息を吐いた。


「………そうだな。お前自身の事だからな…」


「………」



「どれ…少し『人柱』について話してやろう…」



「…うん…」


淡々とした表情の銀狼とは対象的に、私の表情は青ざめている…。


「神や妖者が『人柱』の力を得るには、一般的に二通りの方法がある…。

その一つは、先程のように読んで字のごとく『喰われる』事だ。」



---ゾッとする。



「そして…もう一方は……

 …これも、お前はすでに経験済みだぞ?」


そう言って銀狼はニヤリと不敵な笑いを私に向けてくる…。


何?

どういう事?


呆けた顔で見返す私に、銀狼は妖し気な笑いを浮かべ続きを語る。


「もう一つは、俺とお前が交わした『夫婦の契約』だ…。

 『人柱』同意の上、八百万の神々に夫婦の宣言をする事」



「…!!??」



何ですとっ!?



「ちょっ…ちょっと待ってよ!?

夫婦ってそういう事!?

あたし、銀狼にまで喰われちゃうっの!?」


驚きの発言に動揺が隠せないっ!


「何をいうかっ!俺はお前を喰らわんっ!」


銀狼はピシャリとそう吐き捨て、更に呆れ顔で私を見下ろす。



「まぁ、簡単に言うとこの契約は、

お前という貯蔵庫から、俺は力を引き出す権利者といった所だ」



「…力を引き出す…??どうやって…??」



不信感たっぷりで、見返す私に

銀狼は妖しく口端を吊り上げた。


「そう…。…こんな風に…」



柔らかな風が吹いた。


銀狼の唇が、私の物と重なる。


不意を突かれた私は、目を見開くばかりだ。


それと同時に、自分の身体に異変を感じる。



身体の中心部分が徐々に熱を帯びてくる。


それは、閉ざされた感覚を呼び覚ましていくようだ。



熱はどんどん体内で熱くなり、



……熱くなり、…堪らない気分にさせる。



そして、辺りは甘い香りで充満された。





---何これ…?溶けちゃいそうなぐらい、気持ちいい……