「ご、ごめんなさい。まさか、歳上だなんて…」
「女の子に間違われるのも、年下に思われるのも、始めてじゃないから別にいいんだけど……」
シュンとした鳴人は、その可愛らしさに、さらに磨きがかかり、息を飲みそうな程だったが、傷ついている本人には言うまいと思った。
「真央ちゃん……。実年齢が解ったからと言って急にかしこまるのやめて……。今まで通りでいいから……」
どうやら、この人にとって私の行動は、全て裏目にでるようだ。
「いや、人間離れしてるぐらい綺麗だったから……」
「フォローも、もういいよ」
鳴人は、子犬のような瞳を、横目でコチラに向けている。
その姿は、やっぱりとても愛らしかったが、これも本人に言うのはやめた。
「真央ちゃんこそ、こんな所で百面相して、何かあったの??」
鳴人の登場ですっかり和んでしまっていた私は、その言葉で昨日の事を思い出した。
あの事を誰かに相談してみたい気持ちは山々だったが、言ったところで誰がまともに取り合ってくれるのか??
ーーーただ………。
この人、神主って言ってたよね…??神事をするとかなんとか……。
もしかしたら、この不思議な出来事を解ってくれるかもしれない……。
「……ねえ??鳴人は、神主さんなんだよね…??
そ…の、始めて会った人にこんな話するのもなんだけど、
不思議な体験ってした事…ある…??」
これで、引かれたらこの話は辞めようと思った。
「不思議な体験??」
鳴人の瞳が丸くなる。
ーーやっぱり、辞めようっ!
「あ、なんでもな…」
「あるよ」
その言葉を受けて、私は鳴人に慌てて向きなおる。
鳴人はそんな私に微笑んで続けた。
「だって、僕ん家、ふる~い神社だよ??
家の中にいろんなのいるよ~??
子供の頃なんてしょっちゅう金縛りにあってたし、
そんな悪い物を祓うのも神主の仕事だし、なんて言うか、そんなの日常茶飯事だし」
「本当にっ!?じゃあ、鳴人は、そういうの祓えるのっ!?」
息を巻く私に鳴人は驚いたようだが、すぐに何かを察してくれたようで、年相応の落ち着いた声で私に問いかけた。
「真央ちゃん、何か怖い思いでもしたの?良かったら話してみて。力になれるかもしれないよ?」
その包容力のある声に、昨日から続いていた緊張が一気に解けた。
「真央ちゃん…」
涙が頬を伝う。
知らぬ間に涙が溢れ出ていた。
私は、自分がここまで気に病んでいた事に正直驚いた。
「大丈夫だよ…」
そう言って、鳴人は私の震える肩にそっと手を添えた。