「…言っとくけど…
不思議な力でズルするのは無しだからねっ!」
挑戦的に言い放つ私に銀狼は笑顔で答えた。
「…やはり…
変わらんな…」
銀狼がそう呟いた事も、『射的ゲーム』を目の前にして
瞳をらんらんとさせる私には届いてなかった。
「いざっ!!勝負っ!!」
「バーン、バーン、バーンっ!!」
私の持ち玉3発は、一つも外す事なく的を射る。
それを見た出店のおじさんが驚いた表情で言う。
「うわぁぁ~~!たまげたっ!!
この姉ちゃん、やるなぁ~!
彼氏っ!!こりゃ、頑張らんと恥かくでなっ!!」
彼氏っ!?
おじさんの言葉にドキリとした私は顔を赤める…。
『あぁ~~っ!!勝負に熱中する余り、
わたしったら、また女子らしくない事を~~』
今更そんな事思っても時すでにおそし、だ。
せめて、銀狼が的を外さない事を祈る…。
だって、これで銀狼が一つも倒せなかったら…
自己嫌悪で消えたくなってしまうじゃないか…。
そんな私の心を見透かしてか
銀狼は、ニヤリと笑い、銃を構える…。
「…余興とは言え、俺がこんな物、外すわけなかろうが」
「バーン、バーン、バーンっ!!」
「こりゃまいったっ!!
やるねぇ、色男っ!!
おじさん、商売あがったりだっ!!」
悔しそうにそう言うおじさん。
私達は目を合わせてニッコリ微笑み合う。
おじさんから景品のお面を受け取り
私達はまた、次の出店へと歩き出す。
なんだか…
本当にデートみたいで
凄く楽しい…。
「…お前…、俺が外すと思っていたろう?」
銀狼お得意の偉そうな表情で問かけてきた。
「…あはは…!
そんな事ないよっ!
そう言えば、銀狼、昔から射的得意だったよね?」
「…!?」
自分の吐いた言葉に一瞬「?」が浮かぶ…。
その違和感に銀狼は気付かなかったようでそのまま会話を進める…。
「あぁ!
昔も、お前に景品を取ってやったろう?
まさか、お前があんなに射的の腕を上げているとは思わなかったが」
「………」
答えない私に銀狼が足を止める。
「…真央?どうした?」
「…う、ううん…。何でもない…」
何なのだろう…。
この違和感は…。