「???」

私は、訳が解らないながらも

銀狼に言われた通り奥の部屋からあの浴衣を持ってくる。

「…浴衣なんて引っ張り出して…
 
 どうすんの…?」

「脱げ♪着せてやる!」

銀狼の手が私の肩に伸びる。


「…バチンっ!!」


「………」


「……この…バカ犬が……

 あんたには学習能力ってもんは無いのかね?」


「す…すまん…」

平手打ちを銀狼の左頬にお見舞いしたが…

銀狼の奴め…

いつになく素直な態度じゃないか…。


仕方なく、自分で浴衣を羽織った私に

銀狼が綺麗に手直しをしていく…。

私…

銀狼にこういう風にしてもらうの、

嫌いじゃないな…。


浴衣の着付けが終わった後、

私は、鏡台の引き出しから、『あれ』を取り出した。

そして、それを無言で銀狼に手渡す。

「………」

「…あぁ…綺麗にしてやろう…」


銀狼は優しく瞳を細め、私の髪にそっとそれを添えた…。


「…シャリン…」


涼やかな音色に、私まで笑顔になってしまう…。


「では…、準備が出来た所で…」


そう言って銀狼は何処かに誘導でもするかのように、私の手を取った。

「??銀狼??」

不思議そうに、見つめる私に……


銀狼が妖しく笑った…。


「…!?」


「夕餉の礼だっ!!受け取れっ!!」


銀狼の瞳が金色に輝くっ!!


静かだった室内に突如突風が巻き起こる!!

「…銀狼!!」

叫んだ私と、金色の瞳が重なる!!

「…ニヤリ…」

「………っ!!」


いやあああぁぁっ!!

悪い予感しかしないっ!!

巻き起こった突風は、私と銀狼を飲み込む!


激しい風に視界が徐々に狭くなっていく!!


耐え切れなくなった私は…

固く瞳を閉じるしかなかった。


「ゴオオオオーーーっ!!」


けたたましい風鳴りだけが私を支配する…。


『もぅっ!!こんなのばっかり!!

 勘弁してぇぇぇっ!!!』


思わず、彼に恋してしまった事を後悔しそうになった瞬間だった…。