「…またせたな…」


聞き覚えのある、耳心地の良い声が降ってきた。


顔をあげると、火の玉のあった場所に銀狼が立っている。


「~~~!!!!」


「ちょっと!!びっくりするじゃないっ!!何て現れ方してんのよっ!!

 ちゃんと、玄関から入って来なさいよっ!!」


「な…なんだ、なんだ?」


突然わめき散らす私に銀狼は状況が掴めていないようだ。


「お前が来いと言うから来たのだろうっ!?」

「言ったけどっ!!現れ方ってもんがあるでしょうっ!?」


銀狼は怒ったような顔で私を睨んでいる。

そんな顔で睨んでも、銀狼が悪いっ!!!


銀狼の予想外の登場シーンにすっかり腹を立てた私は、

一通り喚いた後に、ハッと気付かされる。


『あぁ~~~~っ!!!

 こんな言い合いがしたかった訳じゃないのに~~~』


チラっと視線を銀狼に合わせてみると

銀狼は腕組をし、そっぽを向いている。

突然私に喚かれて、ご機嫌斜めのようだ。


『はぁ~…』


溜息しか出て来ない。

今日は一日後悔のしどうしだ…。


「ま、まぁ、もう済んだ事だし…?」


「………」


「せっかくの料理だし…?」


「………」


「席に着きなさいよ」


『あぁぁぁぁぁ…

 何て可愛くない女なんだろう…』

この可愛げのなさ…

女子力云々、以前の問題だ…。

性格に難アリ!としか思えない…。

銀狼はどう思ったのだろう…?

うなだれつつも、銀狼にまたも視線を合わせてみると…


プイッとそっぽを向き、他所を睨んでいた銀狼だったが、

私の言葉に、ちゃぶ台にキチンと用意された料理が目に付いたようだった。


「…これ…お前が作ったのか…?」

「…!?…え、ぇぇ…あはは…」

……咄嗟に嘘をついてしまった…。


ちゃぶ台には、鳴人が作ってくれた、

筑前煮と、塩さば、ご飯に、味噌汁といった純和食が並んでいる…。

その内、私が作った物と言えば…

塩さばのみだ……

調理方法は焼くだけ……。

料理と言っていいのかですら、謎である…。


「さ、さぁ、座って座って!せっかくの料理が冷めちゃう!」

私は、銀狼の背中を押す。

背中を押した私の掌は汗ばんでいる…。

銀狼を席に着かせた私は女子らしく、料理をよそう。

『そうそう!こういう事がしたかったの!』

そんな気持ちとは裏腹に、こそばゆいような、かすかな緊張感が

私を包み込む…。