祥子が姿を消して10日が経とうとしていた。

さお里ヶ丘にあるお屋敷にも、そこから車でも2,3時間はかかりそうな実家の古谷邸にも帰ってこない祥子を祥子の両親もメイドたちも血眼になって探しまわった。

しまいには、警察の誘拐も視野にいれた大規模な捜査と捜索もはじまった。

「…祥子……っ。
 いったい、どこにいるの……?」

祥子がまだ家に帰ってないと知らされた10日前から、ずっとこの調子の祥子の母、美佐子は自室のベッドに腰かけ泣いていた。

そんな美佐子を見下ろすように、ベッドのすぐ脇で立ったままでいる祥子の父、秀人も神妙な面持ちだ。

「奥様、旦那様。祥子お嬢様のことで少しよろしいでしょうか?」

美佐子も秀人もドアの向こうから聞こえる「祥子」という単語に顔を上げた。

「さ、祥子が見つかったのですか!?」

美佐子はベッドから立ち上がる勢いで、上半身をドアの方へと傾けた。

「あ…、いえ。」

声の主は明らかに動揺を見せた。

「祥子お嬢様は、まだ…。」

「だったら、なんだ。」
秀人も少し声を強めて言う。

「祥子お嬢様のことで、どうしてもお2人に直接お話しがしたいという祥子お嬢様の友人の方がお見えですが、いかが致しましょう。」


「すまないが、話しは君が――。」

「聞くわ!」

美佐子は秀人の言葉を遮り、言った。

「美佐子……。」

「祥子のお友達なのでしょ? お話しを聞いてみたいわ。こちらにお通しして。」

「かしこまりました。」