「入れば?」

 七斗くんは部屋の中を指して言った。

「はい」

 並ぶと少しだけ目線が上だ。でも、清川さんよりは低い。

「君の部屋はそこね。で、僕の部屋はこっち。リビングとキッチンとバスルームは共同。でも、僕はバスルームは使わないから君のスペースだね」

 七斗くんはテキパキと説明をしていく。わたしの頭はついていくだけで精一杯だ。

「そうだ。紙に書いておいてあげる。その方がいいでしょう?」

 七斗くんはそう言うと近くにあった紙に今説明したことを書いてくれた。綺麗な字。全部ひらがなとカタカナ。わたしにも読める。

「漢字、苦手なの知っているんですか?」

「うん。翔太に聞いた」

「翔太?」

「マスター。僕の先生。君にとっての清川。わかる?」

 わたしが頷くと七斗くんはよし、と言った。

「さっき清川が言っていた報告書はこれ。夜に書いて、朝になったら清川に渡してね」

 七斗くんはそれも紙に書いてくれた。

「食事は前と同じで食堂に行ってね。僕は行かないけど気にしないで」

「はい」

 しょくじはしょくどう。

 七斗くんの字はやっぱり綺麗だ。