わたしの身体がにわかに震えた。自分でも理由はわからない。
それでも確かに震えた。
「珠理さん?」
新野さんの声が少し離れたところから聞こえた。
わたしはお母さんから視線を逸らし、助けを求めるように新野さんを見た。
助けて。
わたしは確かにそう思っていた。
「何を、しているんですか?」
新野さんは様子を伺うようにしながらわたしたちに近づいた。
何かがおかしいと気がついたのだろう。
「……お母さんが来ました」
わたしが答えると、新野さんは顔色を変えてわたしの腕を素早く引いた。わたしは新野さんに抱えられるかたちになり、お母さんを見た。
「何をするの?」
お母さんは新野さんを睨みつけるようにした。
「お帰りください」
新野さんは険しい声でお母さんに告げた。
「娘を返して。その子は私のものよ」
わたしを抱き締める腕に力を込めて新野さんは首を横に振った。
「違います。珠理さんは珠理さんのものです。例え親であっても、あなたのものではない」
お母さんは悲しそうな顔でわたしを見た。
「珠理……」
名前を呼ばれ、耳を塞ぎたくなった。