清川さんと少し話をしながらの朝食を終えてわたしは部屋へと戻った。
リビングでは七斗くんがさっきと同じようにテレビを観ていた。
「おかえり」
「ただいま」
七斗くんは真っ直ぐにテレビを見つめる。画面の中では、一家惨殺、とレポーターが伝えている。
「怖いですね」
わたしが呟くと、七斗くんはそう、と訊いた。
「これ、怖いの?」
「怖いです。一人の人が四人も殺しました。だから、怖いです」
「一人殺しても怖いと思う?」
「はい。怖いです」
「どうして?」
どうして、と訊かれわたしは言葉を詰まらせた。どうして怖いのだろう。はっきりとした理由はない。それでも、怖いと感じる。
「……七斗くんは怖くないんですか?」
わたしの質問に、七斗くんは首を傾げた。
「これに関しては怖くないね。ああ、そう。そんな感じ。そもそも、怖いという感覚がいまいちわからない」
七斗くんは淡々と答えた。
「そうなんですか」
「そうなんだよね」
わたしは七斗くんの隣に腰を下ろした。
「チャンネル、替えようか」
七斗くんはそう言ってリモコンを手に取ると、チャンネルを替えた。画面にはこども向けの番組が映し出される。