「さあ、君は報告書を仕上げちゃいなよ」
翔太さんを玄関まで見送った七斗くんはわたしに言った。
「はい」
言われるままわたしは報告書とボールペンを手にした。
報告書は書き込むだけになっていて、漢字の上にはふりがなが振ってあった。これは清川さんの字だ。
『七斗との会話』
その横に空白のスペース。
「会話……」
七斗くんと何を話しただろう。確か、清川さんについて話した気がする。
清川さんをかみの毛について。
わたしはそう書いた。かみ、という漢字がわからなかった。
『七斗の行動』
七斗くんが何をしていたかということだろうか。
オレンジジュースをくれました。
それくらいしかない。
最後に短い日記を書くスペースがある。
今日から新しいへやでくらします。七斗くんといっしょです。にいのさんに会いました。ワンピースがにあっていると言ってくれました。
そう書くと、わたしはボールペンを置いた。
「書けた?」
七斗くんに訊かれ、わたしは頷いた。
「はい。書けました」
「じゃあ、今日はもうお休み。疲れたでしょう?」
七斗くんは柔らかい声で言った。