「それは、七斗くんとお喋りしたり、手を繋いだり、ということですか?」
わたしが訊くと、翔太さんは少しだけ目を丸くした。
「……誰に聞いたの?」
「清川さんです。仲良くなりたいっていうのはそういうことだと言っていました」
翔太さんはうーん、と頭を掻いた。
「ろくなことを教えないな……。あのね、仲良くっていうのは、そうだな……、七斗と楽しくしてくれていればいいよ」
「楽しく、ですか?」
「うん。まあ、お喋りまではいいかな。そんな感じで、珠理ちゃんが楽しいと思えることをしていて」
普通と同じくらい難しく感じる。
「七斗くんは?」
「え?」
「それなら、七斗くんも楽しくないとダメですよね?」
翔太さんはそうだね、と笑った。
「そうだね。二人で楽しく過ごして。それだけでいいよ」
頭に乗せられた手が左右に揺れる。
「はい」
わたしが頷くと、翔太さんはうんうん、と満足そうに笑った。
「じゃあ、お兄さんは帰るから仲良くね」
「早く帰りなよ。どうせ、仕事が山積みなんでしょう」
七斗くんに言われ、翔太さんはう、と詰まった。
「七斗は厳しいなあ。また、様子を見に来るよ」
翔太さんはそう言って帰っていった。