そういえば、どうして七斗くんと一緒に生活しなければいけないのか聞いていない。もしかしたら清川さんは話してくれたのかも知れないが、わたしは聞いていなかった。
実験に協力、という言葉だけは残っている。
「あの……、これは何の実験なんですか?」
わたしが尋ねると、翔太さんはああ、と笑顔を深くした。
「詳しくは話せないんだけど、僕と清川はあるデータを収集しているんだ。それで、ここでの君と七斗の生活が非常に大事な情報となる。報告書のことは聞いている?」
翔太さんに訊かれ、わたしは頷いた。
「まあ、でも難しく考えないで。珠理ちゃんは普通にしてくれていればいいから」
翔太さんはそう言って、わたしの頭をぽん、と撫でた。
「……普通は難しいです」
そう。普通、がよくわからない。だから普通は難しい。
「そっか……」
翔太さんは呟くと、わたしの頭をわしゃわしゃと撫でた。
「じゃあ、七斗と仲良くしてくれるかな?」
「仲良く、ですか?」
清川さんの言葉を思い出した。新野さんはわたしと仲良くなりたくてプレゼントをくれた。お喋りしたり、手を繋いだり。そう言っていた。