「……葉月!」
さっきよりも近くから、聞こえてくる。
……ああ、私だめだなあ。陽平を思うあまり、陽平の声が聞こえちゃうなんて……。
でも、そんな風になっちゃった自分を嫌だと思えない私がいる。
こんなに好きになれたことが、素晴らしいと思えるから──。
「葉月」
その声に誘われるように、後ろを振り向くと。
「……陽……平……」
あの日と同じ、変わらない君がいて。
これ、きっと夢だ……。
そう、頭のどこかが判断しつつ、私は陽平に向かって足を踏み出していた。
そのまま……腕を広げて、思いっきり抱きつく。
恥ずかしいとかそんな感情は、浮かばなかった。
……だって夢だし、とか言い訳して。
「葉月……!やっぱり葉月だ……!」
耳元で、懐かしい陽平の声がする。
……って、
「……え?」
え、これ、私の夢じゃない……の?
「ええええええっ、陽平!?」
私は陽平の首にまわしていた腕をほどき、思いっきり叫んでしまった。
……陽平。
どこからどう見ても、陽平。
今さっき抱きついたから、実体あるし。
試しに手の甲を思いっきりつねってみたら、ものすごく痛かった。
陽平だ。
間違いなく、陽平がここにいる。
「だ……な……、どうして……?」
戸惑いすぎて、上手く言葉にならない。