目を閉じてみると、まるで隣に陽平がいるかのような錯覚に陥る。
去年のように、私の隣で、目を輝かせて。
目を開けたら陽平がそこにいる、そんな気がして、私は花火の音をそのまま聴いていた。
陽平、君は今、どこにいるの?
私のことを思い出したりすることはある?
君は私からいなくなったけど、君のなかに少しでも、私がいてくれたらいいな。
だって、私の中にはこんなに君がいるんだから、そうしないと不公平でしょう?
今年も、この町の空には花火が咲きました。
もしかしたら君も見てるのかな……?
いつまでも前に進めない私を、君は笑うのかもしれないけど、でも、今日で最後にする。
だからせめて、今日だけは君を想わせて。
最後だから、と言い訳をして、私は瞳のなかで君を描く。
それは、私にはあまりにも容易いことだった。
少し癖のある栗色がかった髪も。
まっすぐで、決して何かからそらさなかったあの瞳も。
笑うと犬みたいになる、愛嬌のある笑顔も。
いつも私を導いてくれた温かい手も。
心地良い、優しい声も。
全部、こんなにも鮮明に思い出せる。
「よう……へい……っ」
ああ……駄目だ、私。
我慢しても、また泣いてしまう。
私、こんなに泣き虫だったっけ……?
「……葉月……?」
ほらね、聞こえるんだ。あの声が。
すごく近くから、聴こえるの。
振り向いたらそこにいるような……