そうして小走りで着いた先は海岸線。
積み上げられたテトラポットと、その先にある真っ白な砂浜が水平線に映えている。
確かここは、この花火大会が一番良く見えると言うベストスポットだそうだ。
その通り、そこにはもう沢山の人がいて。
お父さんに肩車された小さな男の子や、しっかりと繋がれた男の子の左手と女の子の右手や、幸せそうな笑顔があちらこちらにあって。
私は人混みの隅っこで、たった一人、立ち尽くしていた。
「……いたっ」
不意に、足の鈍い痛みを自覚し、私は目線を下に下げた。
……浴衣と一緒に入ってた、履き慣れない下駄で走ったから、鼻緒は擦りきれて足はぼろぼろになっていた。
(だから……浴衣は嫌だって言ったのに)
歩きにくいし、足は痛くなるし、目立つし。
……浴衣姿を見てくれる人も、いないし。
……目の奥が熱くなってきて、私は慌てて強く目を瞑った。
だめ、やだ、泣きたくない、こんなところで。
もう、どうして今更……もう、しばらく涙なんて出てなかったのに。
それでも涙は止まらなくて、必死に閉じた瞼の隙間から溢れてきて。
私はいつの間にか、両手で顔を覆い、ひっく、ひっくとしゃくりあげていた。
そのうち膝の力も抜けて、砂浜にしゃがみこんでしまって。
足の痛みと、惨めさと、悲しさと……感情がぐちゃぐちゃになって、どうにかなってしまいそうだった。
会いたいよ……陽平。
もう一度だけ、もう一度だけで良いから。