予想通り、手を繋いで歩く幸せそうな男女も多くいて、私は目をそらした。
今年になってから知ったけど、この花火大会って、ここらへんでも有名で県外からも人が来るような結構大きなイベントらしい。
もしかしたら、陽平も来てるかもしれないな。
さっきから何となく思ってたんだ。
の沢山の人のどこかに、陽平がいるかもしれないって。
花火が始まるときの陽平の目は、本当に楽しそうでキラキラしてたことを覚えてる。
だから、ほら、私のことなんて忘れて、来てたりしそうじゃない?
……もしかしたら、私でない他の女の子を連れて。
「…………」
はあ……やっぱり苦しい。
でも、でもね、それでも良いから、もう一度だけ、君に会いたい。
何も言えなかったから、せめて「さよなら」って、笑って言いたいの。
……ううん、話せなくても良い。ただ、ちらっとすれ違うだけでも良いから。
……駄目だよ。嘘。
こんなの強がり。もうやめよう。
会って、ただ見るだけで、諦めきれる訳がない。
笑顔でさよならなんて、言える訳がないでしょう。