* * *
次の日。
数年ぶりに出してきた、白地に赤い金魚が描かれた浴衣に身を包んだ私は、コンクリートで舗装された道路の上を、慣れない下駄でからんからん音をたて、歩いていた。
駅からまっすぐに海岸に向かなんだかねっても良かったのだけれど、陽平と待ち合わせたあの公園に寄るために、少し遠回りをする。
この道、去年通ったな……と、意外と鮮明な記憶に驚きつつ足を進める。
……ここだ。あの、公園。
陽平は確か、あのブランコの周りの柵に寄りかかってたんだっけ。
こうして公園を見ていると、あの日の陽平の姿がくっきり浮かんでくるようだった。
空を眺めるようにして待っていたその横顔も、私を見つけて嬉しそうに笑うあの瞳も、出店に行こうと言い出したあのときの、私の大好きな笑顔も。
込み上げてくる熱いものを誤魔化すように、私は足を踏み出して、出店が出ている方へと向かった。
……あのときは陽平が手をひいて走ってくれたんだっけ。
思い返すと、手のひらにあの温もりや感触までも浮かんできた。
私は……本当に、陽平が大好きだったんだ。
少し開けた道に到着すると、そこはすごい活気だった。
出店も沢山あって、遠くからお囃子の音色も響いてきて。
何より、人が沢山いて。