そんな私をを目を細めて見つめていた陽平は、楽しそうに微笑んで、それから何事もないように口を開く。





「葉月、俺、お前のこと好きだよ」






一瞬、全ての音が私の周りから遠のく。


発された言葉の意味を理解する前に、身体が動きを止めてしまう。


伺うように彼を見ると、そこにはいつものように優しい顔で──けれど、呆然と見つめるとさすがに気まずいのか、だんだんと目元を紅く染めていく。


「……え」


なにか、なにか言わなきゃいけないのに、喉から漏れるのはそんな音だけで。


戸惑い、歓喜、驚き。色々な感情が脳内でせめぎ合う。今陽平が言ったのは、その、私が抱いてるそれと同じ種類のものなのだろうか。


相変わらず、周りの喧騒は私の耳には届かない。


私と陽平、隔離されてしまったような。





──ドン!





そうして固まる私の後ろで、しかし唐突に爆音と、光の玉が弾けた。


思わず身を竦めてしまうけれど、そうか、もう始まる時間だっけ。



「あ、花火始まっちゃった」



私の後ろの空へと視線を移し、陽平は何もなかったかの様に呟く。



それからにこりとこちらに笑んで、そっとこちらに手を伸ばし、やんわりと空の方を向かせようとする。



「葉月、ほら、何ぼーっとしてんの」



その仕草も、表情も、本当にいつも通りで。



さっきの言葉は夢だったみたいに思えるのに。



私の耳の中には、やっぱりいつまでも、今しがたの告白が響いていて。