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そして、花火大会当日。
陽平と待ち合わせた、海岸にほど近い公園に向かう私。
花火大会に行くと言ったら、お母さんには浴衣を着ていけとか言われたんだけど、いくらデートとは言え彼女でもない私が浴衣なんて、気合い入りすぎみたいな気がするので普通の洋服を着ていく事にした。
……普通の洋服って言っても、普段滅多に着ないような膝上のスカートなんだけど。
麻奈に報告したら、「よし、あたしがメイクしたげる!」と張り切っていたけど、それは丁寧にお断りした。
メイクをするような女の子と対極にいるような私だし、どうせ汗で恐ろしい感じに崩れてしまうのが目に見えてるし。
そんな事を考えながら、公園に着く。
「──葉月!!!」
陽平の声が聞こえたと思ったら、次の瞬間には目の前で楽しそうに笑う、彼の姿。
「陽平!……もう、来てたの?」
正直びっくり。私だって、五分前くらいに着くように来たのに。
「当たり前だろー、楽しみだったんだから」
そう言って、いつものように笑う陽平。
ああ、私、やっぱり陽平の事、好きだなぁ。
意味もなく朱に染まる私の頬を恨めしく思いながら少し俯くと、陽平が私をじぃーっと見て、言う。
「葉月ー、なんで浴衣で来ないんだよ」
「………えっ?」