思いもよらぬ発言に、少し赤くなって目を反らすと、彼は何故か上機嫌そうに質問を続けた。



「ねえねえねえ、高校どこ?昨日の制服見た感じだと、俺のとことは違いそうだけど」



あ……違うんだ。


問題集同じだったからもしかして……と思ったけど、そこまで偶然は重ならなかったらしい。



……あれ、私、なんでちょっと残念に感じてるんだろう。



「あ、えっと……成桂高校……です」



心中のもやもやはとりあえず脇に置いておくことにして、私は答えを口にした。



「ほー、成桂か」


「えっと……あなたは?」


「ああ、俺?俺は松陰」


「松陰……!」


引っ越して来たての私でも聞いたことがある。松陰って確か、理数系の頭の良い学校だった気がする。


「理数系なんですね……!」


私が言うと、彼は薄く笑いながら「まあね」と言った。


「君は文系っぽいよね」


「その通りです」


神妙な顔をして私が言うと、何故か笑われた。──え、なんで?



「でも成桂も頭良いじゃん」


「ええ、まあ……多分?」


正直、あんまり自覚は無いんだけど。


昨日の三人もそうだし、よく言われるから、どうやら、そうらしい。


「そう言えば、名前、聞いて良い?」


「あっ、そうだ名前……!」


うっかりしてたけど、私も聞こうと思ってたんだ。


思わず大きな声を出してしまった私のせいで、周囲から迷惑そうな視線が向けられる。


気まずそうに顔を見合わせると、彼が言った。


「外行こっか。お昼でも食べに行こうぜ」



ここでは喋りにくいし、と続ける彼に向かって、私は頷いた。