私がそう言うと、彼は何故か吹き出して言った。
「いやまあ、ただの通行人だけど……俺、中学んときあーゆーグレてる奴たくさんいたから、慣れてるって感じ?」
「……そう、なんですか……」
私は、いまいち釈然としないまま頷いた。
中学にあんな感じの人たちが沢山いたなんて、高校上がるまで田舎の方に住んでた私には信じられない。
まず中学自体が、学年に一クラスしかなかったから、こっちの高校入ってかなり驚いたのに……まだまだ驚くことがあるなんて。
最近ようやく、人混みとか満員電車に慣れてきたばかりなのに。
そんなことを考えていると、「……ああ、それと、」と言葉をつけ足す。
「可愛かったからかな、君が」
「…………は、はいっ?」
思わず素っ頓狂な声をあげてしまう私を面白そうに眺めて、彼は言った。
「面白い」
「……どういう意味ですか」
「あ、ごめん。いやそのまんまの意味」
「……え」
何だか今ものすごく失礼なことを言われた気がするんだけど。