「うん!最近アイスばっかりだよー」
「今日はどれにするの?」
レジのすぐ横にあるアイスボックスをのぞき込む。
あたしが手にとったのは、最近のお気に入り、ガリガリ君。定番のソーダ味。
最近こればっかりなんだぁ、とおばちゃんにガリガリ君を見せて、それをレジに置いた。
財布から100円玉を取り出して、はい、と手渡す。
「お釣り40円ね」と言いながらおばちゃんが渡してくれた10円玉4枚。
もうすっかりしわしわになってしまったおばちゃんの手からそれを受け取って、店を出た。
自動ドアが開いた瞬間に、もわっと夏の空気があたしにまとわりつく。
あつい…と思わず呟いて、一本ずつ前にに足を進めた。
買ったばっかりのガリガリ君の袋を開けて、口に加えながら頭の中で
あー宿題終わってないなぁ、とか。
美紅(みく)ってば夏休み遊ぼうね!とか言っときながら全く連絡してこないなぁ、とか。
家までの道のり、そんなくだらないことばっかり考えていた。
そしてやっと、もう少しで自分の家にたどり着くという距離に差し掛かったとき。
ぐいっ…!と。
左腕を引っ張られたかと思えば。
目の前が真っ暗になって。
耳元でそっと
「…、静かに、ね」
と。囁く声が聞こえた。