真ちゃんは、静かに話す。
私はそれを、黙って聞く。


なんだか、とても怖くて。

やっぱり人の想いっていうのは、重たくて、痛いものだ、と。

他人事のように、思った。





「蜜」


真ちゃんは顔を上げて、唇の触れそうな位置で。

ひとつ教えて、と、私を見つめた。




「…この前」

…哲の子供がどうこう、って時。




「あの時、俺を思い出した?」

「…………」




…ああ、真ちゃん。

私、真ちゃんに泣きつく気、全然なかった。

電話もらってホッとしたけど、来てほしいとは、思わなかった。


居てくれて、揺れに揺れて。



真ちゃん大好きなんだけど…



狭山久志と結婚しようと考えた時も…

養育費の事を考えた時も…



真ちゃんの所に行こうとは…思わなかった、よ。




忘れてた訳じゃ、ない。

ただ真ちゃんだけは選んじゃいけない、って…思った気が、するんだ。